バードカービングには様々な可能性がありますが、その一つがデコイによる鳥の保護活動です。「デコイ」とは鳥を獲るための囮のことです。その鳥をおびき寄せる誘引効果を利用して、鳥を殺すのではなく、鳥の保護に使えるのではないかと考えたのです。最初はパフィンという海鳥の保護に用いられました。1990年、アホウドリの保護活動に情熱を注いでいた長谷川博氏から、火山島である鳥島から安全な島にアホウドリを移せないかという提案がありました。早速、私が自費でアホウドリのデコイの木型を彫り、京都の会社が樹脂でたくさんのデコイを作りました。100体ものアホウドリのデコイで鳥島に20年にわたる長い保護活動の結果、新しいコロニーが出来るまでになりました。多くの人々の努力が報われ次のステップに踏み出す足掛かりが出来ました。
アホウドリのヒナを鳥島から小笠原の婿島に運び、人工飼育後、婿島から巣立たせ、帰巣本能を利用した婿島での新コロニー作りに、アホウドリのデコイが使われています。2011年2月に最初に婿島から巣立ったアホウドリの一羽が3年ぶりに戻ってきました。 ハワイ州ミッドウェー環礁で、別々の島に居ついていたアホウドリを、音声とデコイによって一か所で再会させようという計画が10年前に持ち上がりました。その長年の努力の結果、ペアーを作ることに成功し、2011年1月、遂にヒナが誕生しました。その島は、鳥島、尖閣列島に次ぐアホウドリの第三番目の繁殖地になりました。
その他、私が今までに関わってきたデコイによる保護活動は、以下の通りです。
コアジサシ・・・・中学生にデコイを作ってもらい、各地で保護活動をしている団体にデコイの貸し出しをしている。
ナベヅル・・・・・山口県でナベヅルの保護に使う
クロツラヘラサギ・鉄道の建設に伴い、ねぐらの環境を良くする
(集団で暮らす鳥には、デコイを使った保護活動に期待が持てます)。
トキ・・・・・・・佐渡のトキの野生復帰のため